2008年5月29日木曜日

はじまり*サイエンス・ライティング講座

サイクロトロンの部品であるポール・チップの存在をしったのは、2005年秋から翌年にかけて開催された「サイエンスライティング講座@京都」がきっかけでした。
サイエンスライティング講座とは、主に理系の院生が、研究を社会に伝えるためのスキルを学んでいくものです。最終的にそれぞれのテーマで作品(基本的には記事)をつくり発表することになっていました。

2月2日は、編集会議。みながそれぞれの作品について、相談しあっていました。私(中尾)は、原爆がどのように伝えられているのかというテーマで、広島をはじめとした日本の博物館、アメリカのラスベガスにオープンしたAtomic Testing Museumを訪れて修士論文を書いた直後だったので、その話をしました。
博物館の比較研究を行なった結果、もちろんアメリカでは広島で伝えている被害については殆ど伝えていないのですが、たとえば放射線について説明するにしても博物館によって全く異なる説明の仕方がされていることがわかりました。つまり、科学的な言説は権威的なものとして、一見客観的なものとして、用いられているのだ、という内容でした。理系の学生からは、とても意外であったという反応や、「客観性」という言葉のあやうさについてなど、いろいろと議論がなされました。
そんななか、たまたまそこに居合わせていた京大博物館の大野先生から、驚くべき事実が知らされたのです。その後地下収蔵室のポールチップを見せていただきました。何も語らないその部品の歴史に心をひかれ、できれば展示の文脈を見つけたい、と調査をはじめました。

ライティング講座GMの塩瀬さんからポールチップについて何か事情を知っていそうな京大の先生方に問い合わせていただいた結果、複数の先生方から、その経緯について一番知っているのは竹腰先生だろうと教えられたのです。<つづく>

その後サイエンスライティング講座作品として書いた記事がこれです。
http://www.symlab.sys.i.kyoto-u.ac.jp/renkei/sci_wri/document/nakao/nakao.html

サイエンスライティング講座2005の作品は山田編集長のもとWeb Publishingされました。
http://www.symlab.sys.i.kyoto-u.ac.jp/renkei/sci_wri/main.html

サイエンスライティング講座は刺激的な出会いの場所でした。この講座によって、さまざまなネットワークが生まれ、現在まで活発に活動しています。
そのうちのひとつ、井戸端サイエンス工房のページはこちら。http://kyoto.vis.ne.jp/isl/

2008年5月4日日曜日

「よみがえる京大サイクロトロン」とこのページについて

はじまりは2006年2月、京都大学博物館の大野先生から「日本が戦時中におこなっていた核開発の遺 品をもっている」と明かされたのでした。

その遺品とは、サイクロトロン(円形加速器)のポールチップという一部分でした。本体のサイクロトロンは戦後GHQによって破壊され、廃棄されていたのでした。にもかかわらず、なぜ、博物館にその一部分があるのか??

展示されていないポールチップにはどのような歴史的文脈があるのか、それを探るため、私たちは調査をはじめました。

関係者へのインタビューや、資料の調査など、少しずつ歴史をたどっていく過程はとてもエキサイティングなものでした。
それを形にまとめたいと、ドキュメンタリーを制作しました。映像は言葉にならない感覚や感情をうつしだすことができるという考えからでした。

折り重なったテーマを、なるべくそのままに、見せることができたら、という思いで制作しました。

といっても、もちろんドキュメンタリーの中にすべて織り込めているわけではなく、また、調査がこれで完結したわけでもありません。これまでの活動によって、新たなつながりや方向が見えてきています。

そこで、これまで及びこれからの活動の一端を、ここで紹介していきたいと思います。
このブログには、インタビューの簡単な記録やそのとき感じたこと、ドキュメンタリーの上映予告や報告などを載せていく予定です。どうぞよろしくお付き合い下さい。


(文章/中尾)