2011年5月24日火曜日
科学史学会での上映(5月29日)
ハワイ大学での上映
日本史や第二次世界大戦の歴史に関心のあるハワイ大関係者が参加してくださり、
上映後は、原爆研究に関係していた日本の物理学者はその倫理的問題をどのように考えていたのか、
ということなど、さまざまな質問をいただきました。
ナチスドイツ史を研究されているManfred Henningsen先生からは、ドイツの
科学者の責任をめぐって、いろいろとご意見をいただきました。
その後いただいたメールを、許可を得たので転載します。
Thank you for alerting me to your documentary. It would be important to follow up on the question whether the physicists in the three countries that were involved in nuclear research, namely the US, Germany and Japan, were ever discussing the ethical issues of what they were doing. I have the impression that they were primarily scientists which didn't care about anything else.
It is also interesting that some of the students in the documentary were talking about your findings in terms of Japanese pride concerning the scientific achievements. I found that disturbing because they didn't seem think about the obvious goal, namely that the Japanese scientists were exactly trying to provide their military with weapons of mass destruction.
In the American case, it played a role that the Nazis were engaged in orchestrating the Holocaust against Jews, though I don't know how much the physicists, many European and American Jews among them, knew about the details at that time.
The question remains for some post-colonialists whether the Americans would have dropped the bombs on German cities. If they had a ready bomb earlier in the war, they would have dropped it on any German city. I think its utterly absurd to say that they dropped them on Japan because of racism. The anti-Nazi sentiments were stronger than anti-Japanese racism in the US at that time.
Again, thanks for a very informative session.
ボーフム大学での上映
昨年11月、記念すべき初の海外上映会を行いました。
初めての海外上映となりましたが、集まったみなさんは真剣に見てくださいました。
日本はドイツはともに第二次世界大戦の敗戦国で、上映後には、ドイツの物理学者と
日本の物理学者の境遇についてや、歴史を残すことに関して様々な議論がなされました。
上映会はボーフム大学で勤務されている永瀬ライマー桂子さんが企画してくださり、
永瀬ライマー桂子さんからも貴重なコメントをいただきました。
上映後、永瀬さんからいただいたメールの一部をご紹介します。
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うちの学生たちは、とても感動していたようです。こういう映画を学生として中尾さ
んがとった、というのは、大きな刺激になったようです。どうもありがとうございま
した。
その後、耳にした反応には以下のようなものがありました。
・ サイクロトロンが原爆製造にどのような役割を果たしたのか、わからない:ここ
も自分で考えてもらおう、というのが、中尾さんの意図だったのでしょうか?そうで
なければ、サイクロトロンの原爆製造における位置を明確にすると、わかりやすい
と、私も思います。
・ 字幕を読んでいると、場面がかわってしまう:これは、日本語を解さない人に見
てもらうときの問題かと思います。場面転換がはやすぎる、と感じた人がままいまし
た。訳を簡単にするか、シーンを長めにするほうが、外国人には楽なようです。ちな
みに私は、場面転換が早すぎる、とはぜんぜん思いませんでした(日本語できいてい
たからですね)。
・それから、討論中にも音楽についての意見がでましたが、「音楽がメランコリーす
ぎる」と感じた人が結構多かったのです。これは中尾さんの映画が、というより、文
化の違いだと思います。ドイツと日本のニュースを比較しても、日本のニュースのほ
うが効果音を使って、ドラマチックにしたりする場合がだんぜん多いのです。私はド
イツにきたばかりのとき、ちょっと物足りなく感じていましたが、今はこちらに慣れ
てしまって、日本のテレビをみると、大げさに感じられます。
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サイクロトロンと原爆の関係については、さまざまなレベルで答えることが
できると思うので、見た人に考えてもらいたかったということもあります。
とはいえ、もう少し技術的な解説を加えられたらよかったと思います。
(この点については、いつも上映後にディスカッションになります)
音楽に関しては、ドイツでの上映ならではの感想で、興味深い点でした。
ドイツでは、負の歴史をどのように伝えていくかということについて、
社会的に高い関心が持たれていることを感じました。
(丁度ベルリン滞在中に国立機関で初のヒトラー展が開催されていて、
見にいきましたが、このヒトラー展の是非をめぐっても国内で様々な
議論がなされていたようです。)